日本の歯科の現状⑤不連続シリーズ・・・保険制度
歯科医になってみると、仕事はすごくやりがいがあるし、なって良かったと思っています。(面白い仕事ですよ!)
なのに世間ではなぜ、歯科医という職業が人気がなくなり、儲からなくなったのか・・・。
これは日本が世界に誇るすばらしい制度『国民健康保険』が原因なのです。(私の個人的考えですが・・・)
ちなみにアメリカはこの制度を導入したと思っても、コストの問題などで実現できていません。
そのため
「お金のない人は、残念ですが治療はできません」と断られるのは一般的なことですし、重症であっても診療を拒否されるといいます。
そしてアメリカで医療をうけると、ものすごい額の医療費を請求されると聞いたことが皆さんもあるのではないでしょうか?
アメリカでは個人個人で医療の保険にはいり、病気に備えているといいます。
盲腸の手術で100万円かかったりします。
皆さんは歯科を受診して「あそこの歯医者は値段が高いなあ」と思ったことはありませんか?
日本人はなぜだか歯医者は値段が高いイメージがあるようです。
これとんでもない誤解なんですね。日本ほど歯科治療費が安い先進国はないんです。健康保険がきく治療の場合ですけど。
そして健康保険の範囲であれば同じ治療ならどこにいっても同じ料金になります。ただ値段の評価は年に1回かわりますし、年齢やローカルルールで若干はかわりますので、多少の差はでます。
前回と今回、同じ治療だったのに、状況によって値段が違うということもあります。
保険は規定以上請求することは不可能ですし、だまって請求したらお縄になります。
いや国民皆保険という制度は大変すばらしい制度ですよ。しかし、仕事に対する評価があまりにもひくすぎるのです。同じ治療をしても他の先進国の10~20分の1程度の報酬にしかならないのです。
では具体的にどのくらいちがうのか見てみましょう。
東京医科歯科大学 医療経済分野の川渕孝一氏の資料をみていきましょう↓2002年の統計ですが、大きくは変わってないとおもってください。
http://blogs.yahoo.co.jp/sikairyouhi/11486113.html
。歯科医療先進国のアメリカとくらべてみます。(2002年の保険の値段で)
少しわかりにくいですが、一番上の根幹治療。これ歯の神経の治療ですね。
日本が歯の根の治療で、5839円なのに、アメリカでは108011円です。約20倍
レントゲン1枚 日本451円 アメリカ 12660円
歯石取り 日本 732円 アメリカ 12566円
ものすごーーく違うことがわかりますよね。
患者さんからすれば、日本は保険がきくから安くていいな!となるんでしょうが、
術者にとっては「安いけど保険ではこれしか報酬をあげませんよ!」ということなんです。
この資料にはありませんが、歯の根の治療
フィリピンでは1本平均70500円
シンガポールでは 平均75000円だそうです。
ちなみにフィリピンのマクドナルドのバリューセットは100円くらいで、日本の5分の1~6分の1です。
・・・・ということはフィリピン人にとって歯の神経の治療は35万円位の感覚になる計算なんです。
さらに日本は材料の値段が高い。材料高いのに、報酬が少ない。
それでも治療しないわけにはいかないから、保険治療の場合、歯科医側がその経費を補填してやるしかないんです。正直いってわたしもバカバカしくなるときがあります。歯の根の治療で5839円であっても、経費が10000円以上なんてこともしょっちゅうあります・・・。(涙)
結局、利益という意味では、こだわった治療をすればするほど、経営的には厳しくなるわけです。
わかりやすくいうと、
ステーキ屋さんで最高級の松坂牛A5のステーキ、1枚5000円で普段提供していたとします。
なのに、日本の国が法律をつくって、勝手に値段を決めて「どのお店も250円で客に提供しなさい!」(20分の1)というのと同じことなんです。焼き肉エビスの社長でもさすがにこれは無理ですよね(涙)
次に日本の医科と比べてみましょう。
初診料・・・・初めての診査料金です。検査や処置は基本的に別です。
医科(内科も耳鼻科も眼科も同じ)が
2700円(このうちの810円程度を患者さん負担)
歯科だけ、なぜか1820円(546円が患者さん負担) ちなみにこれでも1年ほど前によくなったんです。1800円→1820円ですが。
この医科と歯科の差も前から「おかしい!」といわれつづけているんですが、これが現状。
一部では政治力の差、ともいわれていますが、『歯医者いじめ』と苦笑いする人も多いです(悲)
昔は1人の歯科医師で100人患者さんをみていたような時代でしたし、歯の大切さもあまり浸透していなかったため、大ざっぱな治療でもOkでした。そのため一つ一つの報酬は低くても、数をこなして利益を得るというのがありえたわけです。
安くてそこそこの治療でよかった時代から、
報酬が安いのに高額な経費で、高度な治療を求められる時代。
もともと日本の歯科保健制度は、人数をこなさなければ成り立たないもののために、歯科医の数がふえてしまったことばかりが問題視されるのです。
前回述べましたが、歯科医師数の問題だけでないことは、アメリカの歯科医師数を参考にすればわかると思います。
歯科医が人気職業な他の国
歯科医になりたがらない最近の日本人・・・。つづく
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