日本の歯科の現状(不連続シリーズ)⑥・・・そもそも自費治療って何
第5回で、患者さんからは「歯科って高いよね」といわれがちなのに、
世界標準からすると、日本の歯科医(保険診療の場合)が原価割れするほど安い報酬で治療していることを書きました。
ところで、歯科治療していて、「これは保険がきかないので自費ですよ!」っていわれたことないですか?
医科ではあまり聞かない言葉ですね。歯科と比べると医科は広い範囲で保険が適用できると思います。「風邪の治療で保険がきかなかった」なんて経験、あまりないと思います。
医科でいう『風邪』は、歯科でいう『むし歯』のようなもので、もっとも身近な疾患です。しかし、むし歯治療においても、保険で認可されていない治療や材料はたくさんあります。
医科でも特殊な治療となると、全額自費扱いになるようですが、普通の受診の場合はほとんど保険で支払いますよね。半分保険で半分自費でというのは、混合診療といって禁止されています。自費なら全部自費で治療しないといけません。
たとえば保険で癌の治療していて、改善が見られなかったため、保険認可のとれていない薬だけをを自費で使いたいと思っても、保険と自費がごっちゃになるのは、混合診療になるのでダメです。
しかし歯科だけは昔からなぜか保険と自費が、ある原則のもと、混在してもいいという風潮があります。歯石をとるのは保険でやって、かぶせるのは自費のセラミックなんてのもOkです。
アクアの待合室に置いてある医療コミックス『ブラックジャックによろしく』の中に自費診療について書いてあります。↓
癌になった患者さんを救うために、若い医師が保険認可のない薬を使いたいといいます。
しかし、教授は今まで保険で治療してきた患者さんに、自費の薬を使うことは混合診療であり、
例え自費でやったとしても、月数十万円の費用がかかると忠告しています。
↑ 同意を得てから治療するので、「払わせる」という言い方はちょっと語弊がありますが・・・・。
歯科で混合診療が一部認められるというのは、患者さんにとっては保険や自費を使い分けられるので、親切なルールですよね。
しかし裏をかえせば、歯科の自費治療が特殊なことではなく、自費を取り入れないと大したことができないということを示しており、財政の厳しい国は、歯科には認めざるを得ないのです。
今、保険のきかない処置でも、処置の重要性がわかってきたら、ゆくゆくは保険適用となる可能性はあるのですが、歯科の自費の範囲が大幅に改善されることは期待できません。
歯科治療に費用がかかることはわかっていても財源がないので、歯科の場合は必要最低限が保険の範囲というわけです。
もし歯科を受診して、先生から「いい方法がありますけど自費になりますよ!」と言われた場合、限られた範囲の治療でしかない保険を選ぶか、費用はかかってもいいものを選ぶか、よく聞いてみるといいと思いますよ。
ちなみに、私のくちの中に、金やプラチナなどの金属のかぶせが入っているのは、保険の材料や方法で治療されたくないからです。私の身内が治療にきても絶対に保険外の材料で治療をおすすめします。
歯科の保険治療・・・裕福な方もそうでない方も等しく、国民が健康を維持する為の最低限度の治療
歯科の自費治療・・・保険で認められていない数多くの材料と方法から、担当歯科医師がその患者さんに一番あった治療を選択し、見た目や機能、そして患者さんの健康を守るため、保険治療よりはるかに良い治療
↑こういう風に解釈していただくといいと思います。
勿論保険が悪いと言ってるわけではありませんし、「保険治療だから手を抜く」なんていう歯科医師は一人もいないと私は思っています。
でも患者さんによくなってもらいたいと思っても、保険がきかない、とか、費用がかかるという理由で大したことができず、私たち歯科医はジレンマに陥ることが多いのです。つづく
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