日本の歯科の現状⑦(不連続シリーズ)・・・歯科医になりたがらないもう一つのわけ
最近では、高校や予備校の進路相談で、「歯科はやめた方がいいよ」なーんていう指導がされているらしい、ということを過去ログで書きました。
その原因は「あまり儲からなくなったから・・・」ということはわかっていただけたと思います。
一つ一つの診療報酬が少ないので、たとえ患者さんがわんさか来ても、人件費や材料費がかかるだけで、処置によっては赤字になってしまうんですね。(やればやるほど損をする治療もおおい)
もう一つの理由があります。
飯が食えるようになるまでに、かなり大変だから・・・ということです。
医科、歯科、薬科というのは、大学が6年制です。医歯薬って浪人してる人はめずらしくないのですが、すべて順調にいっても卒業は24歳。
現実には浪人したり、留年したり・・・・。
入学ができたからといって、歯科医になれない人も結構いるんです。毎年かなりの人が留年していきます。毎年3割くらい留年する大学もあります。
6年終わって、卒業試験。これでまたかなり落とされます。卒業できないと国家試験を受けれないのですが、国家試験にとおらないような人は、卒業させないんですね。
大学の国家試験合格率というのは、大学の人気を左右し、優秀な学生を集めるために重大な影響を及ぼします。
また国家試験合格率の悪い大学は、翌年の国からの補助金がカットされてしまうので、存亡の危機になるわけです。
補助金が少ないと、やっていけないので、学費も高くなります(これは私立の場合)。でも当然学費が安いほうが学生はいいですよね。
これは医学部も同じで、国試合格率低下→補助金カット→学費が高い→優秀な学生が他へ入学→さらに国試合格率低下・・・・・・・・・・・スパイラルスパイラル・・・・
何度も留年したり、卒業できなかったり、国試に落ちたりするケースも多々あります。
まあそうやってやっと免許をとったら、今度は修業の日々。
歯科はある程度の治療の基礎がわかるようになるまで、最低3年かかります。歯科医院の院長が、新人の代診を雇って、教えて代診が利益を上げれるようになるのに3年以上という意味です。
その修業期間の給料はホント安いです。
この段階ではまだ結婚して家族を養うほど勇気はないかも。
これが過ぎたら、中級コースへひたすら修業。休日や診療後セミナーに参加して技術を学びます。(これは一生ですが・・・)
5年過ぎたころに、ようやく同級生のなかから「今度独立することになったんだ!」という便りが届くようになります。(私の場合9年半勤めて開業しました)
開業するまでに貯金をたくさんできるか?というとそうではなく、薄給の中から一回3万とか6万とかするセミナー費が必要なので(旅費別)、開業資金はたいして持っていない先生の方が多いと思います。
そうやって開業にいたると、その日から当然借金を背負うんですね。
宮崎市の場合、テナントではなく、100坪~150坪の土地で駐車場付きの建物を自らたてるというのが主流ですから、1坪20万~30万あたりで・・・・・・・・
平均1億くらいの借金となります。テナントはもっと安いですが、財産にはなりませんから。
・・・・・・ちなみに医科の場合2億3億って聞きますが、どうなんでしょうね。
私の場合も開業して4年は結構きつかったですよ。外食はへったし・・・・・。
開業せず、よその医院の分院長になれば(分院長の募集はたくさんあります)、借金もせず、ある程度生活はこまりません。しかし、大概独立するのがこの世界。
よーーーーーするに、ある程度の生活ができるようになるまでに、かなりの時間と、努力が必要となるわけです。
投資が必要なのに、サラリーマンとあまり変わらないような報酬だったら、リスクの少ないサラリーマンのほうがいいんじゃない?っていう風に進路指導で言われてるわけです。
しかし、この職業、人間にとって絶対に必要な仕事です。(外食はしなくても死にませんが、歯は痛いと死ぬ思いをしますし、歯がない人は食事ができず、全身疾患の前触れとなります)
セミナーも行かない、努力もしない医院は衰退してくこともあります。
そのため、進路指導の先生だけではなく、同業者からも、歯科はねーーーー、とネガティブ発言を聞かされることさえあります。
ここで言っておきたいのは、私今まで一度も「歯科医にならなければよかった!」なんて思ったことありませんし、すごく仕事やりがいがありますし、ありがたい仕事だと思っています。
少なくとも私の周囲の先生や、同級生などなど、みんな努力していて、事業的にも成功している方が多いです。まあ類友という言葉もありますが、ポジティブ輪にはポジティブな仲間が集まるからでしょうか・・。
大阪のスーパーデンティスト 南先生もかなりポジティブシンキングですからねー。(南先生は、日本一の歯科医になると前からおっしゃってて、このたび日本顎咬合学会の会長になられました)
飯が食えるようになるまでに、長い期間とお金と努力が必要な世界。
知識だけでは、畳の上の水泳と同じ。考える・・・・の他に、削る、切る(切開)、抜く、盛る、作るなどなど、実際に泳がないと上達しないこの世界。
人間の根本『生』を支える『食』。 『食』を支える『歯』
「食べられるようにしてください!」っていう患者さんのお手伝いができる仕事・・・・私はほこりに思っています。
保険の総入れ歯って、良くかめるように凝ってしまうと、赤字になる部門なんですが、
実は私、赤字ってわかってても高級な材料つかって、お年寄りにいい入れ歯いれて差し上げるの、結構楽しみでやっています(笑) つづく
ブログを書きはじめて10年以上経ちました。プライベートな事や歯科治療・地域の話題など、書いた当時は一般的だった内容や表現が今では適切ではないものもございます。過去の記事をご覧になる際は予めご了承ください。